厩務員の年収は1000万超え?JRAと地方の格差と過酷な給料実態
競走馬の日常を最も近くで支え、勝利の栄光を分かち合う「厩務員(きゅうむいん)」。華やかなパドックや大歓声が響く競馬場の舞台裏で働く彼らの待遇について、「重賞を勝てば年収1000万円を軽く超える」「JRAと地方競馬では天と地ほどの収入格差がある」といった噂が絶えません。競走馬という巨大な経済価値を持つ生き物を扱う特殊な職業だからこそ、その給与体系には独特の構造が存在します。
日本中央競馬会(JRA)と地方競馬全国協会(NAR)、さらには競走馬の基礎を作る育成牧場に至るまで、働く現場によって手取り月収や賞与、退職金制度は劇的に異なります。担当馬の獲得賞金によって上乗せされる「進上金」のリアルな内訳や、早朝2時・3時から始まる過酷な労働実態、そして競馬学校の狭き門まで、関係者の証言や最新データを交えてその真相を徹底解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:JRA厩務員の平均年収は約700万〜900万円と高水準だが、地方競馬の厩務員給料は年収250万〜400万円前後と大きな構造的格差が存在する。
- 要点2:年収1000万円の大台到達は可能だが、基本給だけでなくG1勝利など担当馬の活躍に応じた5%の賞金進上金が決定打となる。
- 要点3:JRA競馬学校の厩務員課程は倍率約4〜6倍かつ年齢制限(原則28歳未満)があり、競走馬育成牧場での実務経験が実質的な必須条件となっている。
【2026年最新】厩務員の平均年収はいくら?JRAと地方競馬の決定的な格差
競走馬に関わる厩務員の収入は、所属する団体や組織の事業規模に直接連動しています。日本中央競馬会(JRA)に所属する厩務員、地方自治体が主催する地方競馬(NAR)の厩舎で働く厩務員、そして北海道などを中心とする民間育成牧場のスタッフでは、同じ「馬の世話をする仕事」でありながら給与テーブルが根本から異なります。
業界団体の労働協約や求人実態データに基づき、それぞれの平均年収、手取り月収、賞与の相場を一覧表にまとめました。
| 区分・職種 | 詳細・数値データ | 一般的な基準・相場 | 編集部の見解・評価 |
|---|---|---|---|
| JRA厩務員 (中央競馬) | 平均年収:約700万〜900万円 初任手取り:約28万〜35万円/月 賞与:年2回(約4〜5ヶ月分) | 日本の全産業平均年収(約460万円)を大幅に上回る水準 | 馬主協会や調教師会による強力な労働協約と莫大な売上規模に支えられ、安定した高給が保証されている。 |
| 地方競馬 厩務員 (南関東4競馬場) | 平均年収:約350万〜500万円 手取り月収:約20万〜30万円 賞与:年1〜2回(競馬場・厩舎依存) | 大井・川崎・船橋・浦和は売上好調で地方内ではトップクラス | ネット投票の普及で売上が急伸しており、手当改善の動きが継続しているが、JRAには及ばない。 |
| 地方競馬 厩務員 (他地区・地方都市) | 平均年収:約240万〜350万円 手取り月収:約16万〜22万円 賞与:寸志〜年1回程度 | 地域最低賃金近傍の基本給に手当がつく構成が主流 | 賞金総額の差が直結する。寮費が格安などの現物給与はあるものの、過酷さに対する賃金格差が課題。 |
| 競走馬育成牧場 (民間スタッフ) | 平均年収:約300万〜450万円 手取り月収:約18万〜26万円 賞与:年1〜2回(約2〜3ヶ月分) | ノーザンファーム等の大手と中小牧場で待遇に幅がある | JRA競馬学校受験への登竜門。騎乗技術や経験年数によって年収500万円以上を狙えるケースもある。 |
| 調教師 (JRA・参考) | 平均年収:約1500万〜3000万円以上 (上位は1億円超) | 厩舎経営者としての事業所得・賞金進上金(10%) | 厩務員からのステップアップの頂点。経営リスクを伴うが、勝ち星次第で青天井の収入を得る。 |
給与水準の違いは、レースで動く賞金原資と団体の財務力に起因します。JRA厩務員は調教師会との統一労働協約により強固な雇用保障と給与体系が敷かれており、30代中盤で基本年収が700万円を超えるケースが一般的です。一方、地方競馬の厩務員給料は各調教師との個別雇用契約に近い形態が多く、賞金規模の差が手取り月収にダイレクトに反映されています。

厩務員の年収1000万超えは本当か?「進上金」の割合と賞金システムの全貌
「厩務員は年収1000万円プレイヤーになれる」という話は、決して都市伝説ではありません。実際にJRAの美浦・栗東トレーニングセンターでは、担当馬の活躍によって年収1000万〜1500万円超に達する厩務員が毎年一定数存在します。その鍵を握るのが、競馬界特有のインセンティブである「進上金(しんじょうきん)」です。
獲得賞金の5%が厩務員に直接還元される仕組み
中央競馬において、レースで獲得した本賞金および出走手当等は、競馬法の規定に基づき一定の割合で関係者に分配されます。一般的な配分割合は以下の通りです。
- 馬主:約80%
- 調教師:約10%
- 騎手:約5%(障害競走は7%)
- 厩務員(担当厩舎スタッフ):約5%
一見すると5%という数値は小さく思えるかもしれませんが、JRAの最高峰レースであるジャパンカップや有馬記念の一着賞金は5億円に達します。このレースを制した場合、厩務員グループおよび担当者に支払われる進上金は1レースだけで2500万円にのぼります(厩舎内でのプール制や按分比率の取り決めにより、担当厩務員への実支給額は調整されます)。
オープンクラスの重賞馬を2頭担当し、年間で重賞を数勝、G1戦線で掲示板(5着以内)に入り続ければ、固定給に加えて数百万円の進上金が積み上がります。基本給とボーナス(賞与)を合算したベース年収が約750万円の厩務員であれば、この進上金の上乗せによって年収1000万円の壁を突破するのです。
進上金の光と影|「担当馬ガチャ」が生む収入の格差
一方で、進上金制度は厩務員個人の収入に大きな年ごとの波をもたらします。未勝利馬や下級条件馬ばかりを担当している年は進上金が数十万円程度にとどまるのに対し、クラシック路線に乗る有力馬を担当した年は一気に跳ね上がります。
厩舎内で誰がどの馬を担当するかは調教師の采配や技術力、経験によって決まるため、実力と運の両方が年収1000万円達成の必須要素となります。決して「所属していれば誰でも毎年1000万円がもらえる」という甘い世界ではありません。
【実態検証】過酷な労働環境と生活リズム|現場の生の声で見えたリアル
高年収の裏側には、一般企業の会社員とは完全にかけ離れた過酷な労働実態と危険が存在します。SNSの現役関係者コミュニティや当事者の手記、各種労働環境調査から浮かび上がるのは、24時間365日生き物の命と向き合う極限の現場です。
午前2時起床は当たり前|夜明け前のトレーニングセンター
JRAのトレーニングセンター(滋賀県栗東・茨城県美浦)で働く厩務員の1日は、深夜から始まります。
- 02:30〜03:00:起床・厩舎へ出勤。馬房の掃除、馬の体温測定、朝の飼い葉(エサ)やり。
- 05:00〜10:00:調教開始。調教助手と連携し、馬の馬装、運動後の手入れ、馬体のケア、獣医師の回診立ち会い。
- 10:30〜14:00:昼休憩・仮眠。この間に私生活の用事を済ませる。
- 14:00〜16:30:午後の作業(ボロ出し、夕方の飼い葉やり、夜飼いの準備、馬体の手入れ)。
- 20:00〜21:00:就寝。
週末に担当馬のレースがある場合は、金曜日や土曜日の深夜から競馬場への輸送に帯同します。レース当日は極度の緊張感の中でパドックを引き、レース直後の馬体のケアやドーピング検査の立ち会いまで行います。生活サイクルが昼夜逆転に近く、慢性的な睡眠不足と戦うことになります。
命の危険と隣り合わせ|500kgの巨体を制御する重圧
競走馬の体重は約450kg〜550kg。サラブレッドは極めて繊細かつ気性の荒い動物であり、ちょっとした物音や影に驚いて暴れることがあります。蹴られる、踏まれる、噛まれるといった事故は日常茶飯事であり、肋骨骨折や足の指の粉砕骨折といった重傷を負うリスクが常に付きまといます。
現場の手記や証言では、「新人の頃、馬房で馬に壁へ押しつぶされそうになり死を覚悟した」「怪我で長期離脱すれば、担当馬が他のスタッフに替わってしまう精神的プレッシャーがある」といった生々しい声が語られています。厩務員が高い給与を得ているのは、この身体的リスクに対する危険手当の意味合いが色濃いためです。

一般に知られていない盲点とネットの誤解
インターネット上の掲示板や転職サイトでは、厩務員の労働条件について極端な情報が交錯しています。現場の実態と乖離しやすい主な誤解を整理します。
誤解1:「厩務員と調教助手は同じ仕事である」
外部から見ると同じ「厩舎スタッフ」に見えますが、業務内容と資格には明確な線引きがあります。
- 厩務員:主に馬房掃除、馬体のブラッシング、引き馬、飼養管理などの地上作業を担当。調教で馬に跨る(騎乗する)ことは基本的に行わない。
- 調教助手:厩務員業務に加え、調教コースで実際に競走馬に騎乗して速い時計を出すトレーニング(追い切りなど)を行う。騎手出身者や高度な乗馬技術保持者が多い。
給与面では、騎乗手当が付く調教助手の方が基本給や手当が高く設定されているケースが多く、年収1000万円を超える確率も調教助手の方が高くなります。
誤解2:「中央競馬の厩務員は公務員である」
JRAが農林水産省管轄の特殊法人であるため、厩務員も公務員だと誤解されがちですが、身分は「各調教師に雇用される民間労働者」です。ただし、労働組合(日本中央競馬会厩務員労働組合など)が非常に強い交渉力を持っており、調教師会との間で統一された給与規程・福利厚生・退職金制度が結ばれているため、準公務員並みの強固な雇用保障が存在します。
厩務員になるには?競馬学校の倍率・年齢制限とキャリアパス
JRAの厩務員として採用されるためには、千葉県白井市にあるJRA競馬学校の「厩務員課程」を卒業することが唯一のルートです。この門を叩くには、厳しい選考基準と年齢制限をクリアしなければなりません。
競馬学校 厩務員課程の応募要件と倍率
厩務員課程の募集は年2回(春・秋)行われますが、一般的な専門学校と異なり、完全な「即戦力育成機関」として位置づけられています。
- 年齢制限:入学時に満20歳以上、原則28歳未満(※特定の騎乗経験・実績等により一部緩和規定あり)。
- 実務経験要件:牧場等における競走馬・育成馬の騎乗・育成管理経験が通算2年以上必須。
- 選考試験内容:筆記試験、面接、身体検査、運動機能検査、および実技試験(騎乗技術)。
- 合格倍率:例年約4倍〜6倍前後(年度や回によっては10倍近くまで跳ね上がることもある狭き門)。
未経験者がいきなり競馬学校を受験することはできず、まずは北海道などの民間の競走馬育成牧場に就職し、2年以上の過酷な実務経験と高度な乗馬技術を積んでから受験資格を得る必要があります。
退職金制度と引退後のセカンドキャリア
JRA厩務員の場合、調教師会が管理する退職金制度が整備されており、勤続30年以上の定年退職時には数千万円規模の退職一時金が支給されます。地方競馬では組合や主催者ごとに退職金共済の加入状況が異なります。
厩務員からのステップアップとしては、さらに難関である国家資格「JRA調教師免許」を取得して独立開業する道(調教師年収は数千万円規模)や、調教助手への職種変更が挙げられます。一方、体力の衰えや重傷によって40代・50代で現場を離れ、育成牧場や乗馬クラブの指導員へと転身するケースも少なくありません。

【プロの結論】厩務員に向いている人・おすすめできない人の判断基準
厩務員という仕事は、労働と報酬のバランスを「生き物への情熱」で補完できるかどうかが決定的な分かれ道となります。職業適性の有無を客観的に判断するための基準を提示します。
厩務員に向いている人(挑戦すべき条件)
- 馬という生き物を心底リスペクトし、感情の起伏を観察できる人:言葉を話せない競走馬の体調不良や脚元の異変をわずかな兆候から察知する洞察力が求められます。
- 早朝勤務と不規則な生活リズムに耐えうる強靭な体力・自己管理能力がある人:飲み会や夜更かしなどの私生活を制限し、馬のリズムに合わせた規則正しい生活を貫ける規律が必要です。
- 勝負の世界特有のプレッシャーをモチベーションに変えられる人:数千万円〜数十億円の価値がある馬を任され、レース結果に一喜一憂するスリルを楽しめる精神的タフさが不可欠です。
厩務員をおすすめできない人(慎重になるべき条件)
- 「高年収」だけを目的にしている人:進上金で1000万円を超えるのは一握りであり、そこに至るまでの下積み期間(育成牧場時代の月収18万〜25万円程度)や身体的リスクに耐えられず挫折します。
- ペット感覚で動物に接してしまう人:競走馬は最終的に経済活動の駒であり、成績が出なければ引退・用途変更となる現実があります。ビジネスとしてのシビアな割り切りができないと精神的に摩耗します。
- 危険回避能力や瞬発的な判断力に自信がない人:一瞬の油断が大怪我や死亡事故につながるため、危機管理意識の低い人には極めて危険な職場です。
【厩務員の年収】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:JRA厩務員の初年度の手取り月収はどのくらいですか?
A1:競馬学校を卒業して厩舎に配属された直後の基本給と諸手当を合わせると、月給は約35万〜40万円程度、税金や社会保険料を引いた手取り月収は約28万〜32万円前後が相場です。これに加えて年2回の賞与が支給されるため、初年度から年収500万円前後が見込めます。
Q2:地方競馬の厩務員からJRAの厩務員に転職することは可能ですか?
A2:制度上、自動的な移籍や引き抜きルートは存在しません。地方競馬で実績を積んだ厩務員であっても、JRA厩務員になるためにはJRA競馬学校の厩務員課程を受験して合格・卒業する必要があります。ただし、地方での実務経験は受験資格の実務要件を満たすため、合格率において有利に働くケースは多々あります。
Q3:未経験から厩務員を目指す場合、最短で何年かかりますか?
A3:未経験からJRA厩務員になるには最短で3年〜4年程度を要します。まず競走馬育成牧場等に就職して2年間の実務経験を積み、競馬学校厩務員課程の試験に1発合格した場合、約半年間の学校研修を経て厩舎配属となります。年齢制限(28歳未満)があるため、20代前半での行動開始が必須です。
Q4:女性でも厩務員として年収1000万円を目指せますか?
A4:十分に可能です。近年は美浦・栗東ともに女性厩務員や女性調教助手の採用が増加しており、重賞馬やG1馬を担当して多額の進上金を獲得している女性スタッフも実在します。体力面の負担をカバーする高い馬扱い技術と細やかなケアが高く評価されています。
まとめ:過酷な現場で夢を追う厩務員の給料事情と今後の展望
競走馬のパートナーである厩務員の年収事情は、JRA(中央競馬)であれば平均年収700万〜900万円、担当馬がG1を制覇すれば年収1000万円〜1500万円超という夢のある報酬体系が確立されています。一方で、地方競馬との構造的な賃金格差や、午前2時起床という過酷な生活リズム、大怪我と隣り合わせの現場リスクが存在するのも紛れもない事実です。
競馬学校の厳しい倍率や実務経験要件を突破した者だけが立てる特別な舞台ですが、自ら手塩にかけて育てた担当馬がターフを駆け抜け、大観衆の前で勝利を掴み取る瞬間は、他業種では決して味わえない大きな達成感をもたらします。高待遇の裏にある責任とリスクを正しく理解した上で、この誇り高きプロフェッショナルの世界を目指す価値は大いにあります。 (出典: 厩 務 員 年収(Yahoo!ニュース))