キングオブコント2020の全貌|ジャルジャル悲願優勝の舞台裏と全記録
2020年9月26日、日本中が未知の感染症による閉塞感に包まれるなか生放送された『キングオブコント2020』は、大会の歴史において決定的な転換点となった名勝負として今なお語り継がれています。長年コントシーンの最前線を走り続けながらも賞レースの頂点に手が届かなかった実力派たちの執念と、新世代の尖った才能が真っ向から激突した熱戦でした。
結成17年目にして13回目の挑戦となったジャルジャルが悲願の初優勝を果たし、ニューヨークが準優勝で大躍進を遂げ、空気階段やニッポンの社長が強烈な爪痕を残したあの夜、舞台上と審査員席の間で何が起きていたのか。当時の採点データや公式コメント、メディア報道、そして現在のお笑い界に与えた構造的影響まで多角的に解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:ジャルジャルがファースト477点、ファイナル464点(合計941点)を叩き出し、13年目の挑戦で悲願の大会制覇を達成。
- 要点2:ニューヨークの準優勝、空気階段の躍進に加え、ニッポンの社長「ケンタウロス」など後世に影響を与える衝撃作が続出。
- 要点3:松本人志をはじめとする審査員陣の講評から、2020年代コントの「競技性と作家性の両立」という評価基準が確立された。
歴代屈指の大激戦|キングオブコント2020の最終順位・点数と全ネタ順
大会を振り返るうえで欠かせないのが、出場者10組のパフォーマンス順と審査員の採点結果です。トップバッターから波乱含みの展開となったファーストステージと、上位3組によるハイレベルなファイナルステージの全貌を客観データとして整理しました。
| 順位・組名 | ネタ順・披露ネタ名 | 1st / Final得点(合計) | 編集部の見解・評価 |
|---|---|---|---|
| 優勝:ジャルジャル | 5番手「野音の練習」 最終「空き巣」 | 477点 / 464点 (合計 941点) | 圧倒的な手数とテンポ。独自の世界観を賞レースの尺に見事に落とし込んだ完成度。 |
| 準優勝:ニューヨーク | 9番手「結婚式の余興」 最終「ダンス講師」 | 461点 / 463点 (合計 924点) | 人間の生々しい毒と皮肉をエンタメに昇華。大舞台での勝負強さを証明。 |
| 3位:空気階段 | 4番手「霊媒師」 最終「定食屋」 | 458点 / 463点 (合計 921点) | 哀愁と狂気が同居する独自の人物描写。翌年の歴代最高得点Vへの助走となった。 |
| 4位タイ:ジャングルポケット | 10番手「取り調べ」 | 458点 (1stステージ敗退※) | 空気階段と同点だったものの、大会規定(より高得点を付けた審査員数)により惜敗。 |
| 5位:ニッポンの社長 | 8番手「ケンタウロス」 | 454点 | セリフを極限まで削ぎ落とし、視覚的暴力性と音楽で魅せたカルト的傑作。 |
| 6位:ザ・ギース | 6番手「ハープ」 | 457点 | 高佐の本格的なハープ演奏という特技をギミックにした知性派シュールコント。 |
| 7位:ロングコートダディ | 3番手「段ボール」 | 446点 | ゆったりとしたテンポの中で織りなす絶妙な会話劇。関東圏でも評価を確立。 |
| 8位タイ:滝音 | 1番手「居酒屋」 | 445点 | さすけ独特の造語ツッコミ(ベイビーワード)が炸裂し、トップバッターの重責を果たす。 |
| 8位タイ:GAG | 2番手「中島」 | 445点 | 4年連続決勝進出。男女の機微を描く構成力の高さを見せるも得点が伸び悩む。 |
| 10位:うるとらブギーズ | 7番手「陶芸家」 | 440点 | 前年準優勝の実力者。繊細なズレを楽しむ設定だったが爆発力で一歩及ばず。 |

ジャルジャル悲願の初優勝|4度目の決勝で見せた進化と松本人志の評価
大会の最大のハイライトは、間違いなくジャルジャルの戴冠劇でした。第1回(2008年)から挑戦を続け、決勝進出回数は通算4回。M-1グランプリでも幾度となく決勝で爪痕を残しながら、無冠の天才と呼ばれ続けたふたりが掴んだ栄冠でした。
ファーストステージで披露したネタ「野音の練習」は、野外音楽堂で本番を控える歌手と、文句を言いに来た近隣住民の掛け合いという極めてシンプルな構造です。しかし、一度噛み合わないリズムが生まれると加速度的に笑いが増幅していくジャルジャル特有の「しつこさ」と「技術」が凝縮されており、審査員全員から95点以上の大絶賛を受けました。
ファイナルステージの「空き巣」でも勢いを落とさず、合計941点を獲得。優勝が決まった瞬間、普段は冷静沈着な後藤淳平が満面の笑みを浮かべ、福徳秀介が顔を覆って涙を流す姿は、視聴者の心を強く打ちました。
番組内でダウンタウンの松本人志は「ジャルジャルはもう何年も前からチャンピオンになってもおかしくなかった。やっと獲ったなという感じ」と最大級の賛辞を贈り、長年賞レースのプレッシャーと戦い続けたふたりの功績を称えました。YouTubeで毎日コントを投稿し続けるという途方もない鍛錬が、最高峰の舞台で結実した瞬間でした。
ニューヨーク準優勝と空気階段の猛追|賞レース史に残る名勝負の深層
2020年大会を語るうえで、ジャルジャルを脅かしたライバルたちの躍進も見逃せません。特筆すべきは、2位に輝いたニューヨークの存在感です。
前年の『M-1グランプリ2019』で最下位に沈み、松本人志からの辛口コメントをきっかけに「悪童キャラ」として覚醒したニューヨーク。この夜披露した1本目「結婚式の余興」では、ヤクザ風の男たちが余興で盛り上がるという人間の見栄と滑稽さを描いたダークなコントで461点を叩き出しました。2本目の「ダンス講師」でも安定した演技力を披露し、合計924点で堂々の準優勝。賞レースの敗者から全国区の人気タレントへと駆け上がる決定的な足がかりとなりました。
さらに、3位となった空気階段の存在も強烈でした。1本目「霊媒師」では鈴木もぐらの圧倒的な憑依芸と水川かたまりのシャープなツッコミが融合し、458点を獲得。ジャングルポケットと同点となったものの、上位得点審査員の数で競り勝ちファイナル進出を果たしました。この大会での手応えが、翌2021年大会での圧倒的な歴代最高得点優勝へと繋がっていくことになります。

ネットを騒然とさせたカルトネタ|ニッポンの社長とロングコートダディの衝撃
大会終了後、SNSやネット掲示板で最も熱狂的な議論を巻き起こしたのが、ニッポンの社長とロングコートダディの関西発の2組でした。
ニッポンの社長が披露した「ケンタウロス」は、学生街の路地裏で絡まれる場面から突如として怪物退治へと急変し、辻がケツをバットでひたすら殴打し続けるという、既存のコント文法を完全に破壊するナンセンスネタでした。台詞は最小限、BGMに合わせて繰り返されるバイオレンスな光景に、スタジオは爆笑と困惑が入り混じる異様な空気に包まれました。ネット上では「今年一番笑った」「頭から離れない」とトレンドを席巻し、彼らの名を全国に知らしめる契機となりました。
一方、ロングコートダディの「段ボール」は、重い荷物を運ぶふたりの何気ないやり取りから生まれる脱力感と間(ま)の美学を提示しました。派手な展開や大きなボケに頼らず、日常の些細な違和感をすくい取る作風は、後の『M-1グランプリ』や単独ライブシーンでの爆発的人気の原点となりました。
【プロの構造分析】審査員採点の傾向と芸人の「競技コント適応論」
賞レースとしての『キングオブコント』は、2020年大会を境に明確な採点基準のパラダイムシフトを経験しました。松本人志、さまぁ〜ず(大竹一樹・三村マサカズ)、バナナマン(設楽統・日村勇紀)の5名体制による審査は、技術と作家性のバランスを極めて精緻に評価するシステムとして機能していました。
従来のコント賞レースでは、分かりやすいストーリー展開や大きなオチが好まれる傾向にありました。しかし2020年大会では、ジャルジャルのような「純粋なシステムと反復」、ニッポンの社長のような「視覚的インパクトと狂気」、ロングコートダディのような「空気感の共有」といった、極めて先鋭的な作家性が正当に評価されました。
心理学における「期待違反理論(期待された展開をあえて裏切ることで強い感情を惹起する効果)」の観点から分析すると、ジャルジャルのコントは観客が予想するリズムをわずかにずらし続けることで脳に心地よい快感を与え続けます。審査員陣はこの高度な技術を見逃さず、点数に反映させました。
【プロの結論】賞レース鑑賞を深く楽しむための判断基準
現代のお笑い賞レースを鑑賞する際、単に「笑えたかどうか」だけでなく、以下の評価軸を持つことで作品の解像度が飛躍的に上がります。
- 構造の美しさを重視する人に向いている視点:設定の導入から伏線回収、またはひとつのルールを最後まで突き詰める「システム構築力」に注目する(ジャルジャル、GAG型)。
- 人間味やドラマ性を楽しみたい人に向いている視点:登場人物の愚かしさや哀愁、毒気のあるリアルな感情表現に注目する(ニューヨーク、空気階段型)。
- おすすめできない見方:「オチが予想通りだったか」「声が大きいか」といった表層的な要素だけで減点してしまうと、コント本来の持つ間(ま)や前衛的な実験性を見落とすリスクがあります。

【キング オブ コント 2020】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:キングオブコント2020の見逃し配信や過去動画を今すぐフル視聴する方法はありますか?
A1:TBS系のお笑い賞レース作品は、主にU-NEXTなどの大手動画配信プラットフォームで歴代大会のアーカイブが公式配信されています。特番やスピンオフ企画を含め、高画質で視聴可能です。
Q2:ジャルジャルの勝因となった審査員の最高得点は誰でしたか?
A2:ファーストステージでジャルジャルには、三村マサカズ氏が97点、松本人志氏・日村勇紀氏が96点、大竹一樹氏・設楽統氏が94点を付け、合計477点という圧倒的な首位を獲得しました。
Q3:同点3位だった空気階段とジャングルポケットの進出判定ルールはどうなっていましたか?
A3:大会規定により、得点が同点(458点)となった場合は「より高得点を付けた審査員の数」で判定されました。空気階段をジャンポケより高く評価した審査員が過半数を占めたため、空気階段がファイナルステージへ進出しました。
まとめ:新時代への転換点となった2020年大会の歴史的意義
『キングオブコント2020』は、コロナ禍という前例のない困難な状況下で開催されながらも、お笑いの持つ純粋な熱量と希望を提示した記念碑的大会でした。ジャルジャルという孤高のコント職人が報われた夜であり、ニューヨーク、空気階段、ニッポンの社長といった現在のお笑い界を牽引するスターたちが次なるステージへと駆け上がった原点でもあります。
洗練された構成力と剥き出しの狂気が高次元でぶつかり合ったこの大会の記録と記憶は、これからもコントの可能性を押し広げる道標として輝き続けます。 (出典: キング オブ コント 2020(Yahoo!ニュース))