国民栄誉賞のスポーツ選手一覧|辞退の真相と知られざる副賞の秘密
1977年の創設以来、日本中を熱狂の渦に巻き込んだ英雄たちに授与されてきた国民栄誉賞。第1号のホームラン王・王貞治氏から、フィギュアスケート男子で五輪連覇を達成し個人最年少受賞となった羽生結弦氏、劇的な世界一で日本中を勇気づけたサッカー日本女子代表(なでしこジャパン)まで、その歴史は日本スポーツ界の金字塔そのものです。
しかし、その華々しい栄誉の裏側には、複数回にわたる打診を固辞したイチロー氏や大谷翔平選手のように「あえて辞退を選んだ」孤高の勝負師たちの葛藤と美学が存在します。「賞金や年金はもらえるのか」「なぜ歴代の天才たちは栄誉を断ったのか」――。本稿では、歴代スポーツ選手受賞者の一覧とともに、厳格な選考基準や副賞の真実、そして辞退の舞台裏を徹底検証します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:歴代のスポーツ選手受賞者は王貞治氏から国枝慎吾氏まで多岐にわたり、圧倒的な記録と国民的感動をもたらしたアスリートが選ばれている。
- 要点2:イチロー氏や大谷翔平選手らが受賞を辞退した背景には、「現役としての求道心」と「物語の完結を拒むアスリート特有の美学」が存在する。
- 要点3:国民栄誉賞に賞金や生涯年金などの特権は一切なく、副賞は慣例として首相裁量で贈られる「約100万円相当の記念品」に限られる。
【歴代一覧】国民栄誉賞を受賞した歴代スポーツ選手と選考理由
国民栄誉賞は、1977年に当時の内閣総理大臣・福田赳夫氏によって創設されました。その契機となったのが、プロ野球・読売ジャイアンツの王貞治氏による通算本塁打数の世界新記録(756本)達成です。それ以降、授与された個人・団体のうち、およそ半数近くをスポーツ関係者が占めています。
以下は、これまで国民栄誉賞を受賞した歴代スポーツ選手およびチームの記録一覧です。単なる記録達成にとどまらず、社会的なインパクトがいかに考慮されてきたかが分かります。
| 受賞者(敬称略) | 受賞年・年齢 | 主な受賞理由・業績 | 贈呈された主な副賞・記念品 |
|---|---|---|---|
| 王貞治(野球) | 1977年(37歳) | 通算756号本塁打の世界新記録達成(第1号受賞) | 鷲のブロンズ像 |
| 衣笠祥雄(野球) | 1987年(40歳) | 2215試合連続出場の世界新記録(鉄人) | 置時計 |
| 千代の富士貢(相撲) | 1989年(34歳) | 大相撲通算最多勝記録更新(通算1045勝) | 陶磁器(花瓶) |
| 高橋尚子(マラソン) | 2000年(28歳) | シドニー五輪女子マラソン金メダル獲得 | 銀製置時計 |
| なでしこジャパン(サッカー) | 2011年(団体) | FIFA女子W杯ドイツ大会初優勝(団体初の受賞) | 熊野筆(化粧筆セット) |
| 吉田沙保里(レスリング) | 2012年(30歳) | 世界大会(五輪+世界選手権)13連覇達成 | 金の真珠ペンダント |
| 長嶋茂雄・松井秀喜(野球) | 2013年(77歳・38歳) | 長年にわたる野球界への顕著な貢献、師弟同時受賞 | 漆塗りの金箔蒔絵バット |
| 伊調馨(レスリング) | 2016年(32歳) | オリンピック女子個人種目で史上初の4連覇 | 西陣織の帯 |
| 羽生結弦(フィギュアスケート) | 2018年(23歳) | 冬季五輪フィギュア男子66年ぶりの2連覇(個人最年少) | 記念品辞退(紋付羽織袴姿で授賞式に出席) |
| 国枝慎吾(車いすテニス) | 2023年(39歳) | パラ五輪金メダル及び四大大会全制覇(生涯GS達成) | 東京銀器(銀製花瓶) |
歴代の選考を振り返ると、2000年の高橋尚子氏以降、オリンピック金メダリストの受賞が目立ちます。さらに2011年には、東日本大震災の直後に世界一を勝ち取った「なでしこジャパン」が、個人の枠組を超えて史上初となる団体受賞を果たしました。社会情勢と国民感情が選考に色濃く反映される点が、この賞の際立った特徴です。

知られざる受賞基準と副賞の真実|「賞金・年金なし」特権の誤解を解く
国民栄誉賞の授与基準は、内閣総理大臣決定に基づき、次のように定められています。
「広く国民に敬愛され、社会に明るい希望を与えることに顕著な業績があったものについて、その栄誉を讃えることを目的とする」
法的な厳密な数値基準(例えば「通算何勝」「世界一何回」など)は存在せず、最終的な授与の可否は内閣総理大臣の判断に委ねられています。そのため、時代ごとの政権や世論の関心が大きく影響する仕組みです。
ネット上や巷の噂で頻繁に囁かれるのが、「受賞者には生涯にわたって非課税の年金が支給される」「特別待遇の特権がある」という説です。しかし、これは完全な誤解です。文化勲章や文化功労者に支給される終身年金(年額数百万円)と混同されているケースが大半であり、内閣府の公式規定において、国民栄誉賞に伴う賞金や年金の支給は1円たりとも設定されていません。
授与されるのは、表彰状と盾、そして「副賞」と呼ばれる記念品のみです。この副賞の予算枠は慣例としておよそ100万円相当と定められており、受賞者の意向や競技の背景に合わせた伝統工芸品などが贈られます。
特筆すべきは、2018年に個人最年少の23歳で受賞した羽生結弦氏の対応です。羽生氏は「被災地や応援してくださった方々の代表としていただく賞であり、自分個人として記念品を受け取るのは恐れ多い」という強い意思から、約100万円相当の副賞を辞退しました。授賞式には出身地・宮城の伝統織物「仙台平(せんだいひら)」の袴姿で登場し、その凛とした振る舞いは大きな話題を呼びました。
なぜ断ったのか?イチロー・大谷翔平ら「辞退した選手」の知られざる真相
最高峰の栄誉とされる一方で、打診を受けながらも自らの信念に基づき「辞退」を選択したアスリートたちがいます。その理由は単なる謙遜にとどまらず、プロフェッショナルとしての明確な美学に根ざしています。
世界の盗塁王・福本豊氏が見せた究極の気配り
国民栄誉賞の打診を初めて辞退したスポーツ選手は、元阪急ブレーブスの福本豊氏です。1983年に当時の世界記録となる通算939盗塁を達成した際、中曽根康弘内閣からの打診を断りました。後に残した「そんなもん貰うたら、立ちションもでけへんようになる」という発言は昭和の名言として語り継がれていますが、これはメディア向けの照れ隠しでした。
福本氏の自著や回顧録によると、真相は「自分のような一芸に秀でただけの選手が、第1号の王さんのような国民的模範と同じ賞をもらうのはおこがましい」「これから先も選手としてグラウンドで泥にまみれて戦い続ける上で、身動きが取れなくなる」という、先人への敬意と現役としての矜持でした。
イチロー氏が貫いた「人生の幕引き」の哲学
歴代最多となる「3度の打診をすべて辞退」したのがイチロー氏です。2001年の大リーグ新人王&MVP獲得時、2004年のシーズン最多安打記録(262安打)樹立時、そして2019年の現役引退時の計3回、授与が打診されました。
イチロー氏が一貫して主張したのは、「現役の選手である以上、モチベーションが低下するような栄誉は受け取れない」「賞をいただくのは、人生の幕を下ろす時で十分」という強烈なストイシズムでした。評価されることによって自らの歩みを止められたくないという、孤高の求道者ならではの決断でした。
大谷翔平選手が語った「まだ早い」という現在進行形の意識
2021年、メジャーリーグで満票ア・リーグMVPを獲得した際、岸田文雄政権からの国民栄誉賞打診を丁重に辞退したのが大谷翔平選手です。官房長官の公式会見によれば、大谷選手側からは「まだ道の半ばであり、今後の活躍を見ていただきたい。今回は辞退させていただきたい」という趣旨の回答があったと明かされています。
自らの天井を決めず、さらなる高み(50本塁打-50盗塁やワールドシリーズ制覇など)を目指していた大谷選手にとって、一過性の実績で「国民的功労者」として祭り上げられることは、アスリートとしての成長を妨げるノイズになりかねないという判断だったと言えます。

【実態検証】メディア報道の熱狂とファンの温度差|世論調査とネットの声
国民栄誉賞を巡っては、授与のニュースが流れるたびに賞賛が巻き起こる一方で、インターネットやSNS上では冷ややかな視線が向けられることも珍しくありません。特に顕著なのが、「政権による人気取り・支持率浮揚策への利用ではないか」という議論です。
報道各社や政治部記者の分析でも、内閣支持率が低迷する局面や国政選挙を控えたタイミングでスポーツ選手への授与打診が浮上するケースが過去に複数回指摘されてきました。これに対し、熱心なスポーツファンやネットユーザーの間では以下のようなリアルな反応が定着しています。
- 「大谷選手が辞退して心底ホッとした。純粋な野球の挑戦を政治の道具にしてほしくない」
- 「オリンピックで金メダルを獲った選手の中でも、なぜあの人は良くてこの人はダメなのか、線引きが曖昧すぎる」
- 「引退してから功績全体を讃えればいい。現役選手にプレッシャーを与えるべきではない」
スポーツが持つ純粋な感動が、政治的な文脈によって消費されることへの抵抗感。現代のファンコミュニティは、無邪気な礼賛一色ではなく、アスリート個人の自立した活動環境を第一に守ろうとする成熟した視座を持つようになっています。
【プロの結論】スポーツ社会学から読み解く「栄誉と辞退」の心理的力学
なぜトップアスリートにとって、国家からの最高栄誉が時に「重荷」となるのか。この現象の背景には、スポーツ心理学および社会学における「物語の完結(アイデンティティの固定化)」という構造的リスクが潜んでいます。
国民栄誉賞を受賞するという行為は、社会的に「あなたの物語はここで最高のクライマックスを迎えました」と認定されることと同義です。しかし、前人未到の領域に挑み続ける勝負師にとって、過去の栄光にピンを留められることは、内発的動機づけ(自らの好奇心や向上心)を阻害し、燃え尽き症候群(バーンアウト)を引き起こす危険性をはらんでいます。
辞退を選んだ福本氏、イチロー氏、大谷選手に共通するのは、強固な「心理的バウンダリー(自他境界)」の確立です。国家や世論が押し付けてくる「国民的英雄」という記号に安易に自己を同化させず、自分はあくまでグラウンド上の表現者に過ぎないという境界線を明確に引いているのです。
逆に、羽生結弦氏のように20代前半の現役バリバリで受諾したケースは、極めて稀有な覚悟の上に成り立っています。羽生氏は受賞後、「これからの生き方そのものが試される賞である」と自らに課し、その後の過酷な4回転アクセル挑戦やプロ転向後の単独東京ドーム公演へと自らを追い込み続けました。受諾するにせよ辞退するにせよ、超一流アスリートたちは自らの存在価値を国家の権威に委ねることなく、自身のプレーで証明し続ける選択をしています。

【2026年最新展望】次の受賞者は誰か?注目されるアスリートと選考の行方
2026年現在、スポーツ界における国民栄誉賞の議論はどのような局面を迎えているのでしょうか。最も注目されている論点は、依然として大谷翔平選手への将来的な授与です。2度目の満票MVP、前人未到の記録達成、そしてドジャースでの世界一を牽引した功績は、もはや授与基準を何重にもクリアしています。
しかし、前述の辞退経緯を踏まえれば、官邸サイドが再び打診を行うのは「ユニフォームを脱ぐ引退のタイミング」であるというのが球界関係者の一致した見解です。現役中の再打診はアスリートへの配慮を欠くとの批判を招きかねないためです。
また、冬季・夏季五輪での歴代記録更新者や、世界的な舞台で競技の常識を覆した若手アスリートたちも将来の候補として名前が挙がります。しかし選考側にも、かつてのような「話題づくり」優先の姿勢から、本人の意思や競技生活への影響を最優先に考慮する配慮が求められる時代になっています。
【国民栄誉賞 スポーツ選手】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:国民栄誉賞を受賞すると、税金の免除や特別な年金がもらえるのですか?
A1:いいえ、一切ありません。国民栄誉賞には賞金も生涯年金もなく、税制上の優遇措置も存在しません。贈られるのは表彰状、盾、そして慣例として約100万円相当の記念品(副賞)のみです。終身年金が出るのは文化功労者(年額数百万円)などの公的顕彰制度であり、国民栄誉賞とは制度が全く異なります。
Q2:オリンピックで金メダルを獲れば、誰でも国民栄誉賞をもらえますか?
A2:金メダルを獲得しただけでは授与されません。高橋尚子氏(五輪マラソン日本女子初金)、吉田沙保里氏(五輪3連覇・世界大会13連覇)、伊調馨氏(五輪個人種目4連覇)のように、日本初・世界初の圧倒的な大記録を達成し、広く国民に熱狂と希望を与えたと判断された場合に限られます。明確な自動選考基準はなく、時の政権の総合的な判断に委ねられます。
Q3:これまでに国民栄誉賞を辞退した人物は、何人いますか?
A3:公式に辞退が確認・報道されているのは、プロ野球の福本豊氏(1983年)、元首相の佐藤栄作氏(遺族が辞退)、作曲家の古関裕而氏(没後打診を遺族が辞退)、イチロー氏(2001年・2004年・2019年の3回)、大谷翔平選手(2021年)などです。スポーツ選手では福本氏、イチロー氏、大谷選手の3名が代表的です。
まとめ:栄誉の重みとアスリートが貫く矜持
国民栄誉賞は、創設以来半世紀近くにわたり、日本人が共有してきた熱狂と誇りの象徴でした。第1号の王貞治氏から始まり、逆境を乗り越えて世界を制したなでしこジャパン、フィギュア界の頂点を極めた羽生結弦氏まで、その受賞者たちの足跡は色褪せることのない輝きを放っています。
同時に、福本豊氏やイチロー氏、大谷翔平選手が示した「辞退」という選択肢は、国家から与えられる権威以上に、アスリート自身が背負う現場へのプライドと未来への挑戦がいかに尊いものであるかを私たちに教えてくれます。
名誉を受け入れて社会への責任を全うする道と、賞を辞退してどこまでも自らの限界へ挑み続ける道。そのどちらの決断にも、勝負の世界に命を懸けるアスリートたちの孤高の哲学が息づいています。今後新たな受賞者が誕生する時も、記録の数字だけでなく、彼らが貫く生き様そのものに目を向けることが重要です。 (出典: 国民 栄誉 賞 スポーツ 選手(Yahoo!ニュース))